Excel ライブラリ – セルのコピー&ペースト

普段の Excel 操作では、「Ctrl+C」でコピーし、「Ctrl+V」でペーストするという手順が当たり前のように感じられます。しかし、Infragistics の Excel ライブラリを使ってプログラム上でセルのコピー＆ペーストを行おうとすると、「あれ、ペーストってどうやるの？」という疑問にぶつかります。

❓ 「コピー」と「ペースト」はどこにある？

実はこのライブラリには、コピーやペーストといった専用のメソッドは存在しません。
その代わりに、「値」や「フォーマット」を明示的に代入することで、「コピー＆ペースト」が実現されます。

✅ コピーとペーストの区別がない

Infragistics の Excel ライブラリでは、コピーとペーストの区別がありません。

値をコピーして別のセルに代入する処理そのものが、コピー＆ペーストを意味します。

// セルA1の値をA2にコピー（＝ペースト）している
worksheet.Rows[1].Cells[0].Value = worksheet.Rows[0].Cells[0].Value;

このように、値をそのまま代入するだけで、Excel 上でのコピー＆ペーストと同じ効果が得られます。
ペースト専用の命令があるわけではなく、「代入」こそがコピー＆ペーストという考え方になります。

📌 範囲コピーも手動処理が基本

Excel では範囲選択して一括でコピー＆ペーストすることができますが、Infragistics の Excel ライブラリには範囲コピーや範囲ペーストのための API は存在しません。
そのため、コピー元の範囲と貼り付け先の範囲をループなどで走査しながら、1セルずつ個別に処理する必要があります。

📌 書式もコピーしたいときは？

値だけでなく、フォント・色・罫線・背景色などのフォーマット（書式）もコピーしたい場合は、以下のように CellFormat の各プロパティを個別に代入していきます。（設定できるフォーマットの一部です）

private void CopyCellFormat(WorksheetCell sourceCell, WorksheetCell targetCell)
{
    // フォントの設定
    targetCell.CellFormat.Font.Bold = sourceCell.CellFormat.Font.Bold;
    targetCell.CellFormat.Font.Italic = sourceCell.CellFormat.Font.Italic;
    targetCell.CellFormat.Font.Name = sourceCell.CellFormat.Font.Name;
    targetCell.CellFormat.Font.Height = sourceCell.CellFormat.Font.Height;
    targetCell.CellFormat.Font.ColorInfo = sourceCell.CellFormat.Font.ColorInfo;

    // 塗りつぶし
    targetCell.CellFormat.Fill = sourceCell.CellFormat.Fill;

    // アライメント
    targetCell.CellFormat.Alignment = sourceCell.CellFormat.Alignment;
    targetCell.CellFormat.WrapText = sourceCell.CellFormat.WrapText;

    // 罫線
    targetCell.CellFormat.BottomBorderStyle = sourceCell.CellFormat.BottomBorderStyle;
    targetCell.CellFormat.TopBorderStyle = sourceCell.CellFormat.TopBorderStyle;
    targetCell.CellFormat.LeftBorderStyle = sourceCell.CellFormat.LeftBorderStyle;
    targetCell.CellFormat.RightBorderStyle = sourceCell.CellFormat.RightBorderStyle;
}

この処理により、見た目を含めた「コピー＆ペースト」が実現されます。
CellFormat で指定できるプロパティについては以下をご参照ください。

• IWorksheetCellFormat インターフェース メンバ

🧪 実際のサンプルコード

以下のサンプルでは、Excel ファイルを開き、セル A1・B1 の値とフォーマットをそれぞれ A2・B2 に「コピー＆ペースト」しています。

private void CopyCellButton_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    OpenFileDialog openFileDialog = new OpenFileDialog
    {
        Filter = "Excel Files (*.xls;*.xlsx)|*.xls;*.xlsx"
    };

    if (openFileDialog.ShowDialog() == true)
    {
        string filePath = openFileDialog.FileName;

        // Excelファイル読み込み
        Workbook workbook = Workbook.Load(filePath);
        Worksheet worksheet = workbook.Worksheets[0];

        // A1 → A2
        var cellA1 = worksheet.Rows[0].Cells[0];
        var cellA2 = worksheet.Rows[1].Cells[0];
        cellA2.Value = cellA1.Value;

        // B1 → B2（値 + フォーマット）
        var cellB1 = worksheet.Rows[0].Cells[1];
        var cellB2 = worksheet.Rows[1].Cells[1];
        cellB2.Value = cellB1.Value;
        CopyCellFormat(cellB1, cellB2);

        string savePath = Path.Combine(
            Environment.GetFolderPath(Environment.SpecialFolder.Desktop),
            "CopiedCellsSample.xlsx"
        );

        workbook.Save(savePath);
        MessageBox.Show($"コピー完了！\n保存場所: {savePath}");
    }
}

📘 まとめ

• Infragistics の Excel ライブラリには「ペースト処理」はありません。
• コピーした値や書式を「代入」することがコピー＆ペーストそのものです。
• 範囲コピーや一括ペーストの API もないため、1セルずつ処理する必要があります。

以下のサンプルでは、Excel ファイルを開き、セル A1・B1 の値とフォーマットをそれぞれ A2・B2 に「コピー＆ペースト」してデスクトップにファイルを出力します。同梱された Excel ファイルもご活用ください。